DiaryYumiko Sakuma

ジョックという文化とトランプ時代

DiaryYumiko Sakuma
ジョックという文化とトランプ時代

もう長いこと近所付き合いをしているSという同年代の白人のアーティスト男子がいる。スノボの世界でもそこそこ知られるくらいだったというし(スノボ男子に名前を出したらひれ伏されたことがある)、女優と付き合っていたこともある。商売はうまくないが、アーティストとしてもそこそこ知られており、もっとブイブイしちゃっても良さそうなものであるが、むしろ気弱なタイプである。なぜこの人は気弱なのだろうかと前から不思議に思っていたが、その謎が解けた。というか、本人が説明してくれた。

しばらく前に起きた「MAGAハットをかぶった白人男性が、ネイティブ・アメリカンの男性の前に立ちふさがってにやにやする」映像をめぐるサーガの話題になったときのことだ。

「ああいうタイプが学校にいたんだよ。体育会系のいばってるやつら。僕なんかアートキッドだったからいじめられたもん。大嫌いだった。僕みたいな経験をしたやつはいっぱいいるはず。だからあのとき、あれだけみんなが強い拒絶反応を示したんだよ」

ジョックスと呼ばれる人たち。ミートヘッド(頭の中が肉でできてる)系である。私の学校にもいたよ、そういう人たちは。甘やかされているうえに力があるから手に負えないタイプ。遭遇したのが大学だったからまだ良かったと思う。いばってて意地悪な筋肉系の中学生とか高校生とか想像しただけで最悪である。なるほど、だからこの子は気弱なんだな。

ちなみにこの事件は、あとになって複数の映像が浮上し、ブラック・イスラエルティズと自称する人たちが、MAGA帽子の白人の高校生たちに罵声を浴びせ、これに対して白人の子たちがスポーツで自分のチームを応援するかけ声をかけることで応戦しているところに、ネイティブ・アメリカンのおじいさんが割って入ろうとして太鼓を叩きながら寄っていったという複雑な構図が浮かび上がったのだが、同時にMAGAの子たちが注目を浴びるなかで、ほぼ全白人学校で、セクシズムが横行しており、ゲイ差別が深刻、などといったの高校の文化が浮かび上がったうえに、この子たちが女の子にひどい罵声を浴びせる映像などが浮上し、私の周りでは「やっぱりパッと見たより複雑なこともあるね」という意見とともに、やっぱりこの子供はジャックアスであるという意見が主流である。

そして、友達のいうように、あれだけの拒絶反応が出てきたのは、自分が若い頃に、いばっていた人たちを思い出すからなのだろう。大人の世界ではああいう人間は許していけないのだという気持ちが喚起されるのだと思う。よく考えたら、MAGAの支持者はそういうイメージなんだな。いばってて意地悪な体育会系がどこにも行かずに地元にとどまってクサクサしてる的な。そして大統領以下、政権にいる人たちは、いばってて意地悪な体育会系が成功してしまって権力を手にしてしまったタイプばかりだ。

備忘録:コンヴィングトンの少年たちとトランピズムの毒(Crooked)