ダイバーシティ みんないろいろある
POPEYEの最新号で「ノンフィクションではない」連載が始まった。フィクションを書かないかと言っていただき、もちろん最初の反応は「そんなの無理」だったわけだけれど、よくよく考えてみれば生きるなかで目にしたり耳にしたりすることを書けばいいわけだし、いつもとおんなじか、と覚悟を決めて、年下のPOPEYE世代の友人の目を通して見る世界を書くことにした。覚悟を決めたはいいけれど、いざ発売になるとドキドキして、不安で眠れなくなったよ。
テーマはざっくりいうと、ダイバーシティである。この言葉を使うと行政くさくなるけれど、要はみんないろいろあるってことだ。アメリカに住んでいると自分がアジア人であることや、女性であることについては常に考えざるを得ないし、でも誰だって「自分が何者であるか」と折り合いをつけてながら生きているのだと思うから。もうひとつ、ノンフィクションでも同じ視点から連載をすることになっているのだが、タイトルが決まらなくて走り出せずにいる。
連載が始まった不安で眠れなくなったうえに、ときどき夜中にやる「racist rant」検索をやったらさらに眠れなくなった。白人(やたまにその他の人)がマイノリティに人種差別的言葉を投げつけることで、検索すると恐ろしいビデオがゴロゴロ出てくる。こういう行為が表現の自由で保証された言論か、ヘイトクライム扱いになるかは州によるが、だいたいビデオで晒されて仕事を失ったりする結果になる。なのに全然減らない。むしろ増えている。トランプ大統領が選出されたことで、これまで隠していたレイシズムを表現していいと思ってしまう人がいるのだ。ああ怖い。
Yumiko Sakuma