マリファナをめぐるあれこれについての続報
「真面目にマリファナの話をしよう」は、アメリカの、そして国際的なマリファナに対する認識がどのように変わったか、ということを、歴史的な推移と、医療的にマリファナを必要としてきた人たちによる戦いを通じて振り返り、かつ医療面での効能で今わかっていることについて書いたものであった。
意図として「日本ではタブーになっていることを平坦な言葉で書く」というものがあったので、日本の法律的なことや医療面での効能は、かなり割愛した部分もあった。
もうひとつ、本が刊行されるときに「日本では、この問題について話をしてくれる人はほぼいないよ」と言われていたのだけれど、実際蓋を開けてみるとそんなことはなくて、だからこそ、こうやってトークやイベントを活発にできているのであるが、それをせっかくだからまとめてみようと思った。
若林恵、正高佑志(医師)、山崎まいこ(医師)、水野佑(弁護士)、早坂香須(メイクアップアーティスト)、箕輪厚介(編集者)(敬称略)との対談、インタビューなどをまとめています。ウェルネス、法律、CBD、自由など、多岐に渡る話題を取り上げました。
というわけで、「みんなとマリファナの話をしよう」という副読本を作りました。今日から、Sakumag.comのショップでも販売を始めました。
余談ですが、本編の「真面目にマリファナの話をしよう」はもうずいぶん長いことアマゾンで欠品になっております。まだ市中にある在庫があるので増刷にはいたっていませんが、このままがんばって売っていきたいと思っています。Sakumagは補充していこうと思っているのと、楽天などにはまだありますし、できればリアル本屋でご購入いただけるというのが理想です。みなさん、よろしくお願いします。
ついでに、アメリカから最新情報。
先日、下院の司法委員会が、マリファナをドラッグ扱いの「スケジュール1」から外して、スケジューリング(分類)から除外する法案を可決した。The Marijuana Opportunity Reinvestment and Expungement (MORE) Actと名付けられた法案は、下院の本会議と上院で可決されれば、実質的に連邦政府による「Prohibition(マリファナ禁止)」を終結させることになる。
これまで、連邦政府がマリファナの非合法化をどう終了させるかという道筋については、いろいろなシナリオが考えられてきた。非犯罪化(たとえば公共の場での使用はチケットをもらう程度の軽犯罪にする)するのか、完全に合法化するのか、または医薬扱いにするのか、各州のやり方を見ると、そのメソッドにもいろいろなバリエーションがある。また大きな課題として、これまでマリファナ関係の犯罪で有罪になった人たちをどうするか、という問題があった。
今回の法案が画期的なのは、マリファナを完全にドラッグの分類から外す、というポイントである。しかも、マリファナ関連の犯罪で服役中の人口を救済し、売上から見込める税金の5%をこれまでマリファナを理由に前科がついたり、投獄されたりして人生にネガティブな影響を受けた人たちの職業訓練などにつかうという条項がついている。想像していたより、人権的配慮がされている。
問題はこれが、共和党が多数派を占める上院で通るかである。マリファナの問題は、左派だけが推進してきたものではなく、そこに個人の権利やプライバシーを重視するリバタリアンたちとくっついたものである。だからマリファナ合法派がアメリカでマジョリティを形成できたのだ。とはいえ、上院の共和党議員のなかには、ミッチ・マコーネル院内総務以下、アンチ・マリファナの強行派がいて、おそらくこの法案がそのまま通るとは考えにくい。どうなるのだろうか、ドキドキ。
一方、日本では、こうした世界の動きとは逆行したことばかりが起きる。最近、びっくりしたのは、大麻の合法国から、大麻の栽培法などを発信していた日本人が、一時帰国中に逮捕されたという件である。直接の所持や譲渡、栽培ではないのに、どうやって逮捕するんだと思ったら、麻薬特例法を適用されたという。これはけっこうなビッグディールである。ついにそこまできたかと思わざるを得ない。
自分が本を書いたことも「あおった」ということになるだろうか、とすかさず考える。大麻合法運動をしている方々もTwitterのプロフィールに「勧めてません」などと書いたりしている。もはや発信すらだめなのか。すごいな、日本。