熊本でコミュニティのことを考えた。
沖縄から熊本へ。5年前に一度訪れただけで、今回も街をウロウロしようと思っていたが、さすがに少し疲れていたのか低速で進んでいたら時間切れ。トークの直前に、Onthebooksに上田千春さんを訪ね、コーヒーを飲ませてもらい、内沼晋太郎さんと駆け足で打ち合わせをしてトークをした。こんな時代の出版の話、これからやりたいこと、楽しく勉強になるトークだった。
トークのあとの予定は立てていなかったけれど、トークにきてくれた素敵女子二人と、長崎書店の齊藤仁昭さんについて長崎書店のある生き生 きした商店街から少し歩いたところ、Pavaoという店に行った。そこにはほかにもトーク会場から流れてきた人たちがきていて、子供連れのお母さんがいたり、フラッと一人でやってくる人がいたり、とても素敵な店だった。そこから流れてきたチューンに、そこにいた人たちが体を揺らしたり、一緒に歌ったりして盛り上がる瞬間があった。聞くと斎藤さんの所属するバンド、ケバブ・ジョンソンの楽曲だという。予定していなかったのに、こんなローカルな店にたどり着いたことに感謝。
斉藤さんは、長崎健一社長の同級生で、最近東京からUターンしてきて長崎書店で働いている。私が若者で将来に迷っていたら、こんな書店員さんと出会いたいと思う。自分が迷走しながらなんとか社会で機能する大人に成長にできたひとつには書店の存在が大きいから。
その日、熊本で会った人たちは、いろんな場所に行って戻ってきた人、他のどこかからやってきた人、ずっと熊本にいる人たち。みんな、他の場所で学んだことを熊本で活かしたいと感じていそうなムードである。
ところで熊本は、かつてヴィンテージのメッカだったという。「気がついたらドン・キホーテになっちゃって」とNYから帰ってきたという彼女が教えてくれた。ちょっと油断すると、自分の愛すべき街が変わってしまう、そんな話がアメリカにも、日本にもゴロゴロと転がっている。一方で、活気を維持したり、活気を取り戻したり、違う形で生まれ変わる商店街もいろんな場所で見かけるようになった。そういう場所には必ずキーパーソンがいて、それを取り巻くコミュニティがある。東京やニューヨークで見かけるこういう場所は常に大企業から流れる資本の波とせめぎ合っている。けれど、まだまだ再生する余地のある場所はあるのだと思う。人に期待しよう。