最高裁判事候補のレイプ未遂疑惑をめぐるゴタゴタ

最高裁判事候補のレイプ未遂疑惑をめぐるゴタゴタ

最高裁判事候補のブレット・カバノーにレイプ未遂疑惑が出てきたことで世の中は大騒ぎである。最初に疑惑が出てきたときには匿名だった被害者が、ワシントン・ポストのインタビューに応え、事件の詳細が少しずつ明らかになってきた。30年以上前の暴行に、彼女はずっと心を痛めてきて、セラピストに勧められて2012年に夫に事件のことを打ち明けた。セラピストのメモも残っている。カバノーが最高裁判事の候補になったことを知り、ダイアン・ファインスタイン上院議員に手紙を書いた。身元は公表したくなかったけれど、この手紙の存在がジワジワと明らかになったことで、匿名でい続けることはできないと悟り、インタビューに応じた。そして弁護士の勧めでポリグラフ検査を受けた。

最大の関心事は名乗り出た女性が公聴会で証言するのか、というところである。議会のおじいちゃんたちの前で、テレビカメラの前で、自分が苦しんできた過去の記憶について話さなければならないなんて、恐ろしいことである。

実は1991年にも似たようなことがあった。最高裁の陪席判事のクラレンス・トーマスが候補に上がったとき、彼の元で働いていたアニータ・ヒルという女性がセクハラされたとして議会で証言した。そして好奇心と中傷にさらされながらポリグラフ検査を受けて、「真実を言っている」という結果が出たにもかかわらず、トーマスは就任は議会に承認された。今、当時の様子をビデオなどで見ると、アニータ・ヒルは本当に酷い扱いを受けた。今は女性の味方というイメージを持っているジョー・バイデン元副大統領ですら、ひどかったのだ。

今、議会は、被害者のクリスティン・ブレイジー・フォードさんに証言を求めている。公益という点では、彼女が証言することがベストなのだろう。けれどアニータ・ヒル議会での証言を見て、また被害者の女性、それもレイプ未遂の被害者が公聴会で男たちからの質問にさらされると思うとそれだけでげんなりする。

ブレット・カバノーは、すでにここまでの公聴会で、何度も真実に忠実でない証言をしては、書類などで嘘がバレる、という過程を繰り返している。もちろんレイプ疑惑は否定している。議会の共和党議員たちは、フォードさんの証言が実現しなければ、そのままカバノー人事を押し通そうとしている。ちなみに最高裁の判事とは、自分が引退するか弾劾されるまで務めることができる終身の役職である。いいのか、こんなことで。

ちなみにフォードさんからの手紙を受け取ったファインスタイン議員は、アニータ・ヒルの証言が起きた翌年に実施された選挙に勝って上院議員になった。その年の選挙は「Year of the Women」と言われた。それもアニータ・ヒルの受けた屈辱があってのことだ。そして今年、また「女性の年」が来ると言われている。ちなみに、左派のみなさんは、今85歳のファインスタインが、すぐに手紙を公表しなかったことをを憤慨したり、がっかりしたりしている。彼女の地位は(今のところ)安泰で、引退する予定もないらしい。85歳の議員に#metooの空気読めって言っても通じないよね、確かに。

備忘録:アニータ・ヒル カバノー公聴会を正しく行うために(The New York Times)