女性判事の戦いに学ぶ
ルース・ベイダー・ギンズバーグのドキュメンタリー「RGB」を見た。ルース・ベイダー・ギンズバーグは、女性としては史上二人目の最高裁判事の一人で、今となってはクラレンス・トーマスに続き、2番めに在任期間の長い85歳の判事である。ビル・クリントンによって任命され、女性やマイノリティの平等な権利を保証する多くのケースで、決定的な票を投じ続けてきたリベラルの判事で、2009年に出版された伝記のタイトルが「Notorious RBG」だったことから、そのニックネームで愛されているロックスター的存在のおばあちゃんである。
昨日、トランプ大統領が敷こうとした、国境を超えてきた人たちが申請できる難民ステータスの審査をめぐる制限を違憲とする判決では、肺がんの手術を受けた直後の病床から票を投じてリベラルたちを安堵させた。経過は良好と言われているが、この人の存在がなくなれば、最高裁判事内のパワーバランスが変わる。心配である。
ドキュメンタリーは彼女の人生とキャリアを振り返るものだる。彼女には、企業法を専門にした弁護士の夫がいたが、彼女が出世してからは、夫が彼女のキャリアを最優先することを決めてサポートしてきたという。放っておくと延々仕事をし続けるRGBを仕事場に迎えに行き、食事をさせて、夜は再び仕事をし続けるRGBに「寝る時間だよ」と教えてあげていたという。いい話だ。
このドキュメンタリー作品は、1993年に最高裁判事に任命されたRGBが、ときとしては女性蔑視的な態度にさらされながら、淡々と、でも毅然とした態度で、米国憲法は弱い人たちの権利をも保証すると説き続けてきた経過を、職場での賃金格差、軍事学校の女性受け入れ拒否問題などを通じて見せる。そういうときどう返事するのでしょう?という質問に、彼女は「Well, never in anger, as my mother told me. That would have been self-defeating.」と答える。
怒りをもって接してしまうと、自分が負けることになる。これ、ずっしり来ましたよ。そうなんだよね。怒りは人を遠ざける。この人はきっといろいろな偏見や戯言に晒されてきただろうと思われる。その彼女が「怒りを持っては反応しない」と言っている。インスピレーションを受けた。教訓にしよう。