1998年のニューヨーク
ニューヨークに戻って初日。下條ユリさんとハングアウトした。ずっとみっちり話したいと思っていた人である。私がまだ駆け出しだった頃、最前線で活躍する姿がまぶしかった。ちゃんと話をしたのは去年が始めてだった。互いのストーリーを交換するという友情の儀式をした。はからずも自分とニューヨークの関係を反芻することになった。このところ「ニューヨークにいたいのか」を自分に問うていたから、帰った翌日にこういう展開になると、まだ自分とニューヨークの関係は終わらないという符号のように思えた。ユリさんは、一度ニューヨークを離れて京都に行き、今またニューヨークにいる。。うちのキッチンで赤ワインを呑むユリさんの姿に、やっぱりニューヨークが似合うなあなどと考えていた。
私がニューヨークに来たのは1998年。何が起きたっけと思い返してみた。日々、クリントン大統領とモニカ・ルウィンスキーの事件がメディアを賑わせていて、バイアグラが登場した。まだみんなNetscapeを使っていたけれど、Googleが創立された。オサマ・ビン・ラディンのクルーがタンザニアのアメリカ大使館を爆撃し、アメリカがアフガニスタンにミサイルを撃ち込んだ。マシュー・シェパードという21歳の男性ががゲイだという理由だけでフェンスに括り付けられたうえに暴行され死ぬという事件がワイオミングで起き、ジェームス・バード・ジュニアという黒人男性が3人の白人至上主義者たちによってピックアップ・トラックに括り付けられ、引きずられるうちに死亡するという、ヘイト・クライムの歴史に残る酷い事件が二つの起きた。「ヴァギナ・モノローグス」がオフ・ブロードウェイでデビューし、「セックス・アンド・ザ・シティ」の放映が始まった。私のニューヨーク最初の一年はそんなふうだったのだ。
備忘録:セックス・アンド・ザ・シティにインスパイアされた女性たち(The New York Times)