本を作る
2017年の7月から365日書き続けた日記を、内沼晋太郎くんのレーベルから出版するという企画のデザインの打ち合わせをした。編集は伊藤総研。デザインは佐藤亜沙美さん(「ピンヒールははかない」の表紙のイラストを描いてくれたサトウアサミさんとは別の方です)。手がけた作品をずらっと見ると背筋が伸びる。お会いしてみると、私が大好きなタイプの硬派な女性で、一緒にやれることを心からうれしく思う。目標は10月。同じタイミングで、旅のZINEも出そうとしています。
こういうプロジェクトは、経済活動としてはかなり穴だらけだ。コストの計算もできない自分だけれど、40代中盤に差し掛かったときに、作りたいものはどんどん作っていくしかないと覚悟を決めた。だからコマーシャルの仕事もどんどんやる。ジャーナリストという肩書きと決別したのもそのためだ。そしてコスト計算のできる仲間たちに助けてもらっている。
そういえば、7月後半に出るAtlantisに寄稿した。作っているのは、TRANSITの編集長をやっていた加藤直徳くんで、これまで作っていたzineが完結して、ついに雑誌になるのだ。みんなが知らないニューヨークの姿を見たいと言われた。だからニューヨークで一番心理的に遠い場所に、小浪次郎くんと出かけて書いた。他の商業誌からは頼まれないタイプの記事だ。彼が完全にインディペンデントで作っている雑誌を、本屋に自力で営業をかけている姿を、Facebookのポストを通じて見ていて多大な刺激を受けた。自分も、自分のものを作らなければならない!と思うのだ。
生きていくにはお金がかかる。旅をするにはお金がかかる。でも経済活動ばかりやっていると、自分の作品を作る時間が足りなくなる。経済活動とやりたいことのバランスは、永遠の課題でもある。
本の未来はどうなりますか?雑誌の未来は?とよく聞かれる。そんなこと、私だってわからない。かつて、ケヴィン・ケリーに取材に行ったときに、同じ質問をぶつけてみたら「テキストはなくならない。読む、という行為もなくならない」と言っていた。私はそれを信じている。そして作りたいものを作り続けて、お金がついてきたらいいなあと楽観的に考えている。
備忘録:『ATLANTIS zine』完結記念インタビュー。「読者は世界中にいるから、信じてつくり続けるだけ」編集長・加藤直徳さん