金沢、本、児童書、図書館
Phaetonという店を石川県加賀市でやっている坂矢さんのお誘いで、金沢に今年オープンしたウィメンズの店Letoで、My Little New York Times発刊記念のトークをやらせていただいた。発刊記念のトークというやつは難しい。まだ本を手に取っていない人に、本を買ってもらいたいという気持ちを持って話をする、という趣旨だから。話し相手はブックディレクターの幅允孝くんが引き受けてくれた。
今回の本は、1年間書き続けた日記をまとめた本だから、パーソナルなものである。自分なりに世界で起きていることを翻訳しているつもりであっても、「日記」とついた本にお金を払ってくれる人がどれだけいるのだろうか、そんな不安をこっそり抱えつつ、話をしているうちに、だんだん自信がついてきた。胸を張って「買ってね」と言えるための必要なステップだった気がする。東京を出て、最初に行ったのが、何度訪れても温かく迎えてくれる場所だった、ということはとても幸運なことで、それにしても、こんな時代に、まだ出ていない本の著者がやってくるというトークで、洋服を売る店を埋めることのできる坂矢さんはすごい。客に絶大の信用を与えられているということだろう。本という存在と同じように、実店舗の意味も問われている。
トークの前に、ビールを呑みながら幅くんと話をしていたときに、幅くんが「今って、時間の奪い合いだから」と言ったことが胸に刺さった。本を読んでもらうために何ができるか、ということを考えて、彼は図書館の仕事などをしている。親が子供に読み聞かせる絵本は売れているけれど、児童書になるとタイトル数も需要も減る、ということを聞いて、その状況は「本を読む人が減っている」という状況の根源的問題のひとつなんではないだろうか、と考えた。
Yumiko Sakuma