メキシコシティは安全になったか
もう15年以上前に務めていた通信社で一緒だった元同僚のシンシアと再会した。前に会ったのは、私が仕事でメキシコシティに来た12年前以来。メキシコシティ出身で、ラテンアメリカのデスクにいた。帰国して、そのまま私もいた通信社のメキシコ支局に戻り、アメリカ人男性と出会って結婚し、子供を産んで、今は競合の通信社でデスクをやっている。
再会の夜は、シンシアのパートナーとともに3人で食事に出かけた。
「あの頃より、メキシコシティは安全になったような気がするけど、実際はどう?」
二人がぶんぶんぶんと首を横にふる。でもほら、12年前は一人で出かけるのもだめって言われたよ。
「うーん、そうねえ、そうかもねえ。Uber のおかげで移動が楽になったもんね」
そういえば、あのときは、流しのタクシーには絶対に乗ってはいけないと言われた。
「でも、先週もペルーから訪ねてきた友達が、夕食の最中に財布をすられて大変だったんだから」
食後に、二人の家まで歩いていった。ROMAの舞台となったエリアで、低層の住宅ばかりの瀟洒なムードが漂っている。
「カメラと電話しまってね、うちに着くまで出さないこと」
高級化(ジェントリフィケーション)がずいぶん進んでいるとはいっても、やっぱりここはメキシコ。横道から誰が出てくるかわからないからね、だそうである。
ところでシンシアは、朝、車で通勤している。「安全な気持ちで乗れないのよ。財布や電話がすぐすられるし」
電車が怖いと言われるメキシコ・シティ。地元の人でも怖いというのはなかなかである。
Yumiko Sakuma