「物には心がある」

「物には心がある」

今度こそ本当に移転になりそうなので、早起きして築地市場に行った。そして帰りにアミューズ・ミュージアムでやっていたBORO展に行った。そもそもアミューズ・ミュージアムなるものがあること知らなかったのだが、都築響一さんが関わっている展示ということで、せっかく早起きしたので足を伸ばしてみたのだが、想像をはるかに越えるクオリティであった。

展示されているBOROの多くが、民俗学者の田中忠三郎さんのコレクションである。2013年に亡くなった田中さんは青森出身で、縄文遺跡の発掘調査やアイヌ文化、民俗・民具などの研究をしながら、刺し子や麻布、裂織・ぼろ布を集めていた。展示もさることながら、そこここに散りばめられている彼の文章が胸に刺さりまくる。

「私はなく場所がほしかったと老婆が言った。『台所で泣くと、女は台所でなくものではないと言われ、便所で泣くと便所が長いと言われ、野良で泣くと他人が見ていると姑になじられ、夜寝所で泣くとうるさいと夫が怒る。我慢しろとばかりで、女には泣く場所がなかった』。見事な刺し子の技巧が培われたのはそんな時代のことだった」

こうした文章には、田中さんが書いた「物には心がある」から引用されていたものもあって、次の本を書くための多大なるインスピレーションになった。

それにしても、恐ろしいほどのノーマーク感。ショップで、田中さんのコレクションの一部がびっくりするような価格で放出されていた。そして絶版になってアマゾンで高値がついている「物には心がある」も定価で入手することができた。みなさん、ぜひ見に行ってください。

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