政治的なレストラン
ワタワタと東京にやってきてから初めて予定のなかった日曜日、参加させていただいたジンのフェアに立ち寄ったり、お取り置きをピックアップしたり。そして最後は、ニューヨークに舞い戻ってきたアーティスト下條ユリちゃんの個展@creator’s cubeの最終日に飛び込んだ。「ゆみっこ、今日、ジェロームさんがご飯作ってくれるっていうからおいでよ」と誘っていただいたのは、Blind Donkyのジェローム・ヴァーグさんのお宅での食事会であった。
ジェロームさんとは、鹿児島のグッド・ネイバーズ・ジャンボリーでお会いしたことがあったのだけれど、ゆっくり話すのは初めてで、ついでに彼が作るご飯を彼のおうちで食べられてしまうなんてなんとラッキーなことか。酔ったついでに「ヒップな生活革命」を書いたときに、どうしても<シェ・パニーズ>のアリス・ウォーターズさんにインタビューしたくて1年近く追いかけた話をすると、ジェロームさんがおもしろいことを言った。
「僕のレストランに来る人たちには<シェ・パニーズ>に行ったことがある、素晴らしい食体験をした、という人はとても多いのだけれど、何が良かったか?と聞くと、答えられる人は少ない。<シェ・パニーズ>は政治的なレストランなのだけれど、それが日本人には理解されていない気がする」
「政治的なレストラン」。アリスさんは、食材を手に入れるための中間業者を排除し、農家と密な関係を築くことでいわゆる「ファーム・トゥ・テーブル」の先駆けになった人だ。「おいしい」を実現するために、農家に正当な価格を支払って安全な食材を確保するーーそれは実はとても政治的な思想に裏付けられている、ということを理解する人はあまりに少ない。そして「信頼できる食材」を確保することがますます難しくなるこの世の中で、「食の政治(food politics)」はこれからもどんどん重要なトピックになるだろうということも。
アリスさんには、「私がやろうとしてることは、かつて日本人が当たり前にやっていたことだ、と本に書いてほしい」と言われた。その国の人たちが、昼時にジャンクフードを求めてコンビニに並ぶ姿に驚く、とジェロームさんも言っていた。アメリカにも、日本にも危機感を持っている人はいる。が、普通に生きているだけだと気が付かないこともある。アリス・ウォーターズさんを取り上げる人たちは、彼女のレストランがどれだけ美味しいかということだけでなく、政治的な存在である、ということもきちんと取り上げてほしいものです。
備忘録:グローバル食企業は人々の不信感を克服できるか(Forbes)
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